第一章

4/12
前へ
/22ページ
次へ
 見たところ相手は10代前半。  よく見たら俺もそうらしい。  動揺している俺を他所にそいつは「卒業以来だな」と言うと、俺を近くにあったバス停のベンチに座らせ自分もその隣に座って話し出した。  どうやら話を聞いていると俺は中学2年生で、こいつは小学生時代の友達。そして最近俺はある日を境に急に不登校になったらしく、学校ではある意味有名人になっているのだとか……。  途中で何度かバスが止まり、俺達が乗らないと知ると無愛想に扉を閉め、乱暴に排気ガスを吐き散らしながら去っていった。  その間も彼の話は続いたが、俺は自分が昔のことを忘れているのを悟られないように、適当に話に相槌を打っていた。 自分のことを知るチャンスだというのに殆ど聞く気が起きなかったのである。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加