第一章

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 ――それは本当にたわいなく、他人から見ればただの「不幸」・日常の中の「事件」という言葉で片付けられてしまう、まるでテレビの中の出来事だった。  「ほら、早く乗りなさい」  父の帰りが遅くなったある日、俺は母に連れられて車で駅前まで一緒に迎えに行くことになった。 「雨降ってきたな……」 「傘持ってこなかったけど大丈夫かな?」 「今日は帰る前にレストランに寄るから、家に着くまでには止むでしょ」 「レストラン?」 「ちょっともう、自分の誕生日くらい覚えときなさいよ」 母は微笑んでそう言うと、交差点を一つ曲がった。
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