第一章

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 駅に近づく程に雨脚が強くなってきた。視界が悪くなるにつれ、ワイパーの速度は早く、車速は遅くなった。  「母さんそっちは道違うんじゃない?」 「道が混んできたから裏から回るのよ」 「お父さん待たせたら悪いでしょ?」  ここら辺は昔駅舎があったらしいのだが、今の場所にバスターミナルごと移ってからはすっかり住宅地化していた。 しかし嘗ての栄光とでも言うべきか、ここには遊園地があった。尤も、今ではバブル景気の崩壊の後経営難で倒れ完全に廃墟と化しているのだが。  俺がその遊園地の観覧車を窓から遠目に眺めて幼馴染と遊んだ記憶に思いを馳せていると、駅前のロータリーへと向かう大通りが見えてきた。
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