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――前から後ろに向かって流れる夕陽に照らされた並木道。
ふと右を見ると母がハンドルを握っていて、俺はその隣に座っていた。
「おかえり、凜」
「ただいま……?」
俺は、今は、
今日はいつだ?
「母さん、俺は――」
「病院に行ってたのよ」
「交番のお巡りさんには一応お礼を言っておいたけど、後でもう一度ご挨拶に行かないとね」
そうじゃない。
何かが足りない。
何かが思い出せない。
俺の鈍い思考とは裏腹に、母の運転する車は街路樹と同じく夕陽を受け、懐かしい自宅への道を軽快に駆け抜けていった。
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