〇、温かさを知らない

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  ナンシーの唐突な質問に、内心ぎくりとしたに違いない。 しかしマリとして、彼女は堂々と言った。 「太りすぎて外に出れないんじゃないか?」 その言葉に、思わずエースが吹き出しそうになる。 「でもずーっとよ?一番目のメアリー様や、王子様は何度も見るのに、二番目の王女様は一度も見ないのよ?」 「さあ……僕には城の事はわからないから」 第二王女が一度も姿を見せず、外に出てはいけないという王命がある理由。 それは王女が悪魔の子だからだ。 ルントシュテット王国の王ルーイサ・ロゥと第二王妃アン・ブーリンとの間に生まれた子供。 しかし、生まれてきたのは、両目から血を流す女児だった。 赤子が血まみれで生まれてくるのは当たり前だ。 しかし、血を拭い、体をあらってやると、女児の瞳は鮮血の紅(アカ)。 その場にいた者が口をそろえて言った。 呪われた、悪魔の子だと。 そして、やはり涙を流すと血色だった。
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