〇、温かさを知らない

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  「私は時の神(クロノス)だ」 神と名乗る男は艶やかな長い黒髪を揺らして立ち上がり、デーリッヒに手を差しのべた。 「行こう、我が家へ」 先程の空間とは違い、カントリーな外装の家に、広がる緑の高原。 しかし、家の中に入るとやはり奇妙だった。家のあちこちに時計が散りばめられているのだ。 そしてデーリッヒは思わず立ち止まる。 「……?」 鏡に映る自分。 それは全く異なる外見だった。 尖った耳、髪の毛のない頭、幼い顔、小さな体。 オマケに目の周りは隈ができたかの様に黒い。 「ああ、ちょっと外見は失敗しちゃったけど、それも中々愛嬌があって良いと思うよ?」 クロノスはデーリッヒの頭を撫でる。 ここは自分の知っている場所ではない。そう悟ったデーリッヒはテーブルにある椅子に腰かける。 「ここはどこ?」 「神界と人間界の間さ」
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