〇、温かさを知らない

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  本当にこの男は神なのだろうか。 デーリッヒが考えあぐねていると、クロノスは小さく笑い、自分も椅子に腰かけた。 「実はね、人間界に私の娘がいるんだ。君に娘の事を影から見守ってほしい」 娘と言うのなら、その女も神だろうか。 デーリッヒは腕を組み、しばらく考えこんだ。 しかし、デーリッヒは暇が嫌いな質だ。すぐに立ち上がり、クロノスに承諾の返事をした。 「ありがとう。一応、報告してくれる男はいるんだけど、そいつは中々信用できないんだよね」 さあ、こっちにおいでとクロノスはデーリッヒを手招きする。 そしてデーリッヒの頭を掴んだ。 とたんにデーリッヒの頭に情報が流れてきた。 どこにいるか。娘は何者か。 「ナシェル・ヴァル・マルヴァナ」 「そう。それが私の娘の名前だよ。顔もわかったね?」 「うん」 ナシェル・ヴァル・マルヴァナ。 彼女はクロノスの養子だ。そして人々から忌み嫌われる存在。 ある程度状況を把握したデーリッヒは家を飛び出した。
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