霞む朝

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的山は悔しさのあまり、また壁を蹴った。 ――そして今日 裕はともかく眠れない夜から起き上がり、洗面所で顔を洗っていた。 鏡に映る自分の顔を見て、裕は疲れているんだろうなっと感じる。いつもなら起きるのが気だるいだけの眠たそうな顔なのだが、今日は違う。完璧に疲れに支配された、笑顔のない疲労した顔だ。 顔を洗っても拭えないその顔を裕はただ、呆然と見ている。 ただ、ざーっと蛇口から流れ出る水道水が嫌に部屋の中に響くのであった。まるで心が流す涙のように……。
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