陽、没する

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ふと胸ポケットに入っている写真を取り出した。 写真に写っているのは見た目が弱々しそうに見える容姿端麗な女性と、女性が抱えている小さな赤ちゃんである。 待ってろよ……すぐ、この任務を終わらせて帰るからな。 鋼一朗は自分にそう思うと大事そうに写真をポケットに閉まった。 「ご家族の写真ですか?」 隣にいた鋼一朗と見た目が同年代ぐらいに見える男が言う。 「副長か。陸の方に残した家族やけど、赤ん坊が今年でもう一歳になるんや」 そう言うと男はそれを真摯に受け止めるように、言葉を紡ぎ出した。
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