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テーブルには、昨日の晩御飯に、負けず劣らずの料理が並べてある。
しかし、拓魅は、昨日と違い、全く食欲が沸いてこなかった。
とりあえず席に着く。
いただきますも言わずに、食事を始めた。
しかし、全然料理を口に運ぶ気にならない。
無理して口に運んでも、全くのどを通らなかった。
拓魅の頭の中は、食事なんかより、やはりあの事でいっぱいだ。
そんな拓魅を見て、
『どうしたの?拓魅?具合でも悪いの?』
母が問う。
『いや、全然大丈夫だよ。』
母に心配かけまいと拓魅は、強がってみせた。
しかし、食欲など全くない。
一つ溜息をつき、
『ゴメン。ちょっと疲れてるみたい。部屋で休んでくるよ。』
『そう?』
心配する母をよそに拓魅は、席を立ち、自分の部屋へと向かった。
階段を上りながら拓魅は、
『死んでしまったら、お母さんの手料理も、二度と食べれなくなるのか…。二度と…。なら、無理してでも食べてあげるべきだった…。』
そんな事を思っても、食欲は沸かない。
心配してくれる母の優しさも改めて心にしみる。
こんな日々を失いたくない。
拓魅は、ドアを開け、部屋に入った。
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