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この老人は殺害容疑で逮捕され、数十年の間ここで過ごしているが死刑が宣告されていた。最後に一人息子の顔が見たかったが…その息子はとっくに縁を切られていた。
一人残された悲しみに、老人はベッドに腰を降ろしてから目蓋を閉じた。
しばらくして踞(うずくま)る態勢で動かなくなっていた。ショーンに息子の面影を重ねていたのかもしれないが、いなくなった途端にすべてに嫌気が差してしまい、眠るように息を引き取った。
一方、ショーンは事務室で立たされて、三人の刑務官に両足に手錠を施され、両手の手錠にはロープが結び付けてあり、腰に回されてその先を刑務官に握られて、行動が制御されていた。
「なんで移動するんだよっ!くそっ…シカトかよ!」まったく訳の分からないショーンは、近くにいる刑務官に話し掛けた。だが、返事が返られることはなかった。
「ヘリポートに連れていけっ…客人がもうすぐ着く」
ドアを開けて男の刑務官が入ってきた。年配の男でここでは偉いのだろうか、周囲にいた若い刑務官達はすぐさまショーンを連れて、刑務所の建物から出た所にあるヘリポートに向かった。
「おいおい…俺を何処へ連れていく気だっ…」
背後に二人、前方に一人に挟まれているショーンは、大声で叫び出して暴れてみたが手足の手錠でそれ程動く事が出来ない。
「いい事を教えてやる…お前を迎えに来た…」
バリバリ……とヘリのプロペラ音が聞こえてくると、背後の一人が口を開いた。
「迎え?…」
騒音のようなヘリの音の中で耳に入った言葉にショーンは、不安を抱えた。
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