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気配がすっと前に近づいてきました。 光が徐々に姿を照らしだします。     獣の脂で黒光りする毛皮。 漆黒の体が眩しく輝いていました。     「おっ、狼!?」     女の子は思わず叫びました。 森から現われた黒狼。 その眼がじっと女の子を見据えています。 静寂が辺りを包み、小川のせせらぎの音さえもどこかへ行ってしまったかのようでした。   狼は小川を挟んで、女の子の目の前までやってきました。 女の子は大して恐くありませんでした。 老人から聞かされていた印象とずいぶん違ったからです。   『狼は獰猛で生きているもの全てに襲い掛かるような生物だ。そして悪魔の僕でもある。その視線は女を悪魔の虜にする』
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