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目の前のこの狼には恐怖を感じるどころか、どこか荘厳な神秘性を感じていました。 眼の光の中に理知的な感情が宿っている気がしたからです。   「こちらにおいで」   狼が口を開きました。 凛と響く男の声が狼の口から聞こえます。   「おいで」   狼がもう一度言いました。 だけど女の子は老人に言われたことをしっかり守ることにしました。   「ダメ。狼は恐いものだって聞いたわ」   「何故?」 狼は首を傾げます。   「狼は生きているもの全部食べちゃうんでしょ?」   「お腹が空いたときだけ」   「人間も襲うって聞いたわ」   「人間は美味しくない」   「でも、襲うの?」   「生きるため。君達と一緒だ。でも君は違う」
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