孤独の寂しさ

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5月16日 ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ…… 「う…うぅ…」 布団の中から手を伸ばして目覚ましを止める。 ぴッ… 目覚めは………最悪だ。 昔の夢を見た。 あまりにも鮮明だったので吐気すらする。 あの夢の続き…。 たしか…アイツ―――親父はいろんなこと言って、結局金を出してはくれなかった。 そりゃそうだ。 中坊の俺の言ってることは少しおかしかったもんな。 しかし、それから俺は親父が嫌いになった。 何故かって? 金を貰えなかった次の日のことだ。 案の定友達は金を用意出来ず、放課後の校舎裏でボロ雑巾のようになったさ。 俺は謝り続けた。 「ごめん…ごめん…ごめん」 でも。 「…お前…最低だな…」 その次の日から俺は………仲間の輪から外された。 中学生活三年間を………俺は一人で過ごした。 全て親父のせいだと俺は思って、憎んで、軽蔑した。 親父と離れたくて、勉強をして、この寮制のこの学校に入った。 親父も…元クラスメイトもいない、ここへ。 高校に入り一年経って、あれは全部俺が悪いってことくらいわかったさ。 でも、三年間の孤独を忘れた訳じゃない。 だから親父に会うことはまだ…出来ない。 もう…昔の事を思い出すのはやめよう。 何もなかったかのように、俺は着替えて学校へ向かう。 もう、俺は何も間違わないつもりだ。 大切なものを、失わないために…。  
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