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クールな雰囲気を纏った、凛々しい顔立ちの青年が立っている。
だがその顔は何だか哀しそうだ。
「恭介?」
「ん?…あぁ。でも既にメンバーはそろってるぞ」
ふっと真であろう顔に戻り言う。
恭介の言う通り、俺を抜いてもメンバーは既に10人はいる。
ま、ここに俺が無理に入る必要もない。
だから俺は遠慮をしようとした時だった。
「待て。俺が抜ける」
骨折した腕を吊り、道着をはおった男が言った。
コイツは確か…謙吾だ。
2年生にして剣道が高校最強とかいう噂が立っている。
そんな人間が剣道をしないで、こんなところで野球をしてるのは…多分、腕のせいだろう。
飛び下り自殺をしようとした女子生徒を助けようとしたとかなんとかで、よくは知らない。
今日の出来事らしいのだが、俺はその………寝てたわけでね…。
「どうしてだ!!謙吾!!」
恭介が声を荒げる。
彼が叫ぶのが珍しいのか、他の野球メンバーがそろって驚く。
「腕が痛む。それだけだ。…悪いなみんな、期待させてしまって」
「気にしないで、謙吾。しかたないよ」
理樹がみんなを代表して言ったようで、皆うんうんと頷いている。
「本当に悪いな。後は任せたぞ理樹。…そして、紅」
…俺?
去ろうとする謙吾に恭介が近寄り、小声で話す。
「謙吾、お前…」
「いいじゃないか。…見てみたいんだよ、俺は」
偶然、俺には聞こえてしまった。
話の中身は分からなかったが、なんか悪いことしたようで心が痛むのだった。
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