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「お腹、空いてるのかしら?」
「ワンッ!!」
「どうやらそうらしいみたいね。ちょっと待ってなさい」
二木さんは立ち上がり、スカートや制服の上着のポケットを探る。
だが…。
何かに気付いたようで、すぐにその作業をやめた。
「…そうだ、私風紀委員だったわ。…何も持ってるわけないじゃない…」
二木さんは膝を抱えこむようにしゃがみ、うつ向いてしまう。
「ごめんなさい…」
「クゥン」
ストレルカは心配そうに鳴く。
「…ごめん、ごめん。…何も…あげられない」
…二木さんの声が震えていた。
「…私は…何もしてあげられない。…あなたにも…あのコにも………うぅっ」
…もう、俺は見ているだけなんて出来なかった。
女の子が泣いているんだ。
誰だろうと関係ない。
俺は自分の制服のありとあらゆるポケットを探った。
すると、上着のポケットに入れた覚えのない魚肉ソーセージが入っているではないか。
そこで来ヶ谷の姉さんのセリフを思い出す。
『備えあれば憂いなしだぞ』
あの時、すれちがいざまに姉さんが入れたに違いない。
「ありがとうございます」
魚肉ソーセージを見つめ、姉さんに感謝した。
そしてすぐ、その魚肉ソーセージを手に、二木さんのもとへ駆け寄った。
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