孤独の寂しさ

3/10
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/158ページ
「教科書でも忘れたのか?」 机の中を必死で探る三枝に声をかけた。 普段教室で声をかけられないため、突然の出来事にびくっとする三枝。 「あ…あは、そーなんですヨ~。いつも机の中に入れてる教科書がなくてデスね~。困ったもんですヨ」 何だか喋り方がぎこちない。警戒でもされているのだろう。 「借りてきたほうがいいぞ。次、数学だからな」 2学年の数学教師は性格が悪いことで有名だった。 「そですネ。借りてきマス。ありがとね、紅君」 そう言って、三枝はクラスから出て行った。 他のクラスにはちゃんと友達がいるようだ。 それにしても、紅君ねぇ。小学生以来だな、そう呼ばれるのは。今じゃ……… 「おいっ、咲崎!!」 この通り皆ファミリーネームで呼んでくる。咲崎紅(さきざきこう)それが俺の名前。 「なんだよ?」 2人の男子生徒が俺の方へやってくる。 「三枝をはめようとしてんのに邪魔すんなよな~」 片方の生徒の手には数学の教科書。 ………三枝のものだ。  
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!