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「教科書でも忘れたのか?」
机の中を必死で探る三枝に声をかけた。
普段教室で声をかけられないため、突然の出来事にびくっとする三枝。
「あ…あは、そーなんですヨ~。いつも机の中に入れてる教科書がなくてデスね~。困ったもんですヨ」
何だか喋り方がぎこちない。警戒でもされているのだろう。
「借りてきたほうがいいぞ。次、数学だからな」
2学年の数学教師は性格が悪いことで有名だった。
「そですネ。借りてきマス。ありがとね、紅君」
そう言って、三枝はクラスから出て行った。
他のクラスにはちゃんと友達がいるようだ。
それにしても、紅君ねぇ。小学生以来だな、そう呼ばれるのは。今じゃ………
「おいっ、咲崎!!」
この通り皆ファミリーネームで呼んでくる。咲崎紅(さきざきこう)それが俺の名前。
「なんだよ?」
2人の男子生徒が俺の方へやってくる。
「三枝をはめようとしてんのに邪魔すんなよな~」
片方の生徒の手には数学の教科書。
………三枝のものだ。
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