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【勇気】八神 太一
冒険前の俺はがむしゃらに突っ走ることだけが勇気だと思っていた。
小5、春。
エースになって初めてのサッカーの試合。
ピ~。試合終了のホイッスルがなる。
俺達のチームは負けた。
敗因は俺が1人無茶したせい。
冷静に考えれば、あの場面では守りを固めてチャンスを待つべきだった。だけど、俺だけが作戦を無視してボールに向かった。
相手がそれを狙っていたことにも気付かずに…。
試合終了後、俺は自分を攻められるのが嫌で仲間を攻めた。
『お前らが積極的にボールに向かってればこんなことにならなかったんだ!臆病になりやがって!』
俺は自分1人が勇気を出してボールに向かって行ったと主張した。
そんな自分勝手な俺を攻める奴もいなかった。たぶん俺以外の全員がチームの連帯責任だと受け止めていたんだろう。
デジタルワールドの冒険が終わった今、改めてあの時のことを考えてみる。
臆病なのは俺だったよな…。
でも今ならわかる気がする。
攻めることが勇気なら、じっと耐えることもまた勇気。
間違った勇気が仲間を危険に晒すということも俺は知った。
今、俺の中にはどんな勇気があるのだろう?
俺は二度と勇気の使い方を間違えたりはしない。
今度チームのみんなに謝ろう。
謝るのも勇気だと思うから。
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