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動きの止まったドリタ人をよく見てみると、左手首が欠損しているのがわかった。傷口は真新しく、勢いは無いが、血が絶えずこぼれており、まさに今切断されたばかりという具合に見えた。
七人の兵士は馬から降り、息を合わせて男に飛びかかった。
ドリタ人は身をよじって抵抗していたが、数に物を言わす戦法に為す術無く、屈強な五人の兵士に四肢と頭を取り押さえられた。
兵士達は更に、あまつさえ七人全員でその無防備な背や脇に剣を突き刺した。
銀色の羽を無数に生やした俯せの背中は、刃と肉の隙間から溢れる生き血で一瞬のうちに赤く濡れた。
それでも、兵士達は決して手を放さなかった。
ドリタ人が「痛い、痛い」と喚きながらも、少しも弱らずに抵抗を続けていたからである。
イザヤには、彼が不憫でならなかった。あれほど痛い思いをしているのだから、早く死んで楽になってくれれば良いと願った。
頭を押さえつけていた兵士が、剣と逆側の腰に括った小さな刃物を抜いて、側頭部を足で踏みつけるようにして押さえ直した。
ドリタ人が「それだけは嫌だ」と叫んだが、言い終わる前に、血管の浮き出た首の側面に鋭い切っ先が突き立てられた。
イザヤは思わず下を向いた。
下品な叫び声が上がる。その声はすぐに自らの血液で溺れ、ごろごろと音を鳴らした。
目を細めて恐る恐るドリタ人の首を見ると、刃物が喉元を食い破ったところだった。
兵士が首を後ろに折り曲げて傷口を広げ、木の枝を鋸でひくような手付きで骨の部分を切り始めた。
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