イザヤ 第一章

3/12
前へ
/49ページ
次へ
 動きの止まったドリタ人をよく見てみると、左手首が欠損しているのがわかった。傷口は真新しく、勢いは無いが、血が絶えずこぼれており、まさに今切断されたばかりという具合に見えた。    七人の兵士は馬から降り、息を合わせて男に飛びかかった。    ドリタ人は身をよじって抵抗していたが、数に物を言わす戦法に為す術無く、屈強な五人の兵士に四肢と頭を取り押さえられた。    兵士達は更に、あまつさえ七人全員でその無防備な背や脇に剣を突き刺した。    銀色の羽を無数に生やした俯せの背中は、刃と肉の隙間から溢れる生き血で一瞬のうちに赤く濡れた。    それでも、兵士達は決して手を放さなかった。  ドリタ人が「痛い、痛い」と喚きながらも、少しも弱らずに抵抗を続けていたからである。    イザヤには、彼が不憫でならなかった。あれほど痛い思いをしているのだから、早く死んで楽になってくれれば良いと願った。    頭を押さえつけていた兵士が、剣と逆側の腰に括った小さな刃物を抜いて、側頭部を足で踏みつけるようにして押さえ直した。    ドリタ人が「それだけは嫌だ」と叫んだが、言い終わる前に、血管の浮き出た首の側面に鋭い切っ先が突き立てられた。    イザヤは思わず下を向いた。    下品な叫び声が上がる。その声はすぐに自らの血液で溺れ、ごろごろと音を鳴らした。    目を細めて恐る恐るドリタ人の首を見ると、刃物が喉元を食い破ったところだった。    兵士が首を後ろに折り曲げて傷口を広げ、木の枝を鋸でひくような手付きで骨の部分を切り始めた。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加