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客は店の前で立ち止まる。
看板なぞ出してはいない。
だが夢を望む者だけが一目でそれと知れる。
「夢を売ってくれないか?」
女は呟く。
「どのような夢をお望みか」
女は応えないが、代わりに焚いた香が揺らめいた。
煙はそっと夢玉を示す。
「少々、お待ちを」
貴女の望む夢は淡いピンク色。
たくさんの夢玉がひしめくケースから一つだけ取り出し、香の煙でコーティング。
「これは枕箱。さぁ、これを持ち帰るがいい」
夢玉を詰め、女に渡す。
女は夢玉を抱え、そっと目を瞑り……。
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