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「一、騎」
久々に聞いた自分の声に驚く。
自然と、するりと出た声。
暗闇で、微笑む気配。
「やったね、総士。まずは第一歩だ」
「第一歩…」
「そう、これからだぞ総士」
深い、深い暗闇の中。
しかし僕はもう見えない自分を見失わない。
声を出すことが、
一騎を呼ぶことが、
僕の唯一の存在確認。
「…一騎…」
会いたい。
会いたい。
でも僕はまだ暗闇の中。
だからそっと、呟くだけ。
愛しい名前を呟くだけ。
fin.
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