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第一章
豊かな翠色に彩られた穏やかな気候の大陸
そこに暮らす種族は獣のような耳や尻尾
または大きな翼を背負う
ヒトとは似て非なる者たち
ある種族は強靭な肉体を誇り
またある種族は武術に長け
それぞれ種別できる特性があった
種はやがて部族となり
大小さまざまな國を成すに至る
民は大神ウィツァルネミティアを崇め
その大いなる名のもとに
生から死に至るまで儀式を行う慣わし
日々感謝の祈りを捧げることを忘れない
大陸の北東に位置する辺境の地に
ヤマユラの集落がある
作物の育たない痩せた大地ゆえに
民は貧しい生活を強いられながらも
辺境で生きる者ならではの屈強さで
明るく和やかに暮らしていた
そんなある日
もろい民家をなぎ倒すほどの
激しく大地を揺さぶる地震が起きる
そのとき集落付近の森にいた少女は
大怪我をして倒れていた男と出会い
集落へ連れて帰り手厚く看護する
灼けるような熱さと朦朧とした意識の中
少女の唄う子守唄が男の耳に木霊する
どこかで聴いたようななつかしい唄声
男が目覚めたとき 記憶は無に帰していた
失われた過去とこれから導く未来
そのふたつが交錯する物語が始まる
はじまりのうた
それは
大いなる母に抱かれ
その末裔まで唄いつがれる
永遠の子守唄
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