梅雨入り前

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いけ好かない野郎だ。 「会うよ、だから何だよ」 賢くなるってのは窮屈だ。 昔なら殴り飛ばしていた加持だが、この場所でコイツを相手にはどう考えても自殺行為だ。 イライラが加持の口調からも分かる。 馬が合わないてのは、本当にこういうことなのだ。 「ふーん…」 聞いといてそれかよと、加持の額に青筋がたちそうになったところで。 スッとグラスを取り上げられた。 近づく濡れた薄い唇。 それに一瞬気を惹かれたのが間違いで。 幾分自分より冷たい唇が加持のそれに触れていた。 「っ!」 グッと南の二の腕を掴むがビクともしない。 そのうちに南の飲んでいたドリンクの味と一緒に舌が入りこむ。 上質なソファはまるでそれが目的のように、2人分の体重を飲み込み沈むだけだ。 2度目の加持の過ちは南の目を見たこと。 思った以上に雄の目をしていて、ゾクリとした。 巧みに加持の口内を翻弄する南の舌の愛撫。 まるで知っているかのように感じる上顎を撫でられ 「…っん」 加持は声を上げていた。 うますぎる… 脱力した加持の視界には南のニタリと笑い濡れた己の唇を舐める様。 「っ!」 俄に加持は自分の頬が赤くなるのを感じた。 次の瞬間にはワイシャツのボタンは音を立てて弾け飛んでいた。 「テメェっ!」 流石にと加持は抵抗するが、両腕はきつく掴まれソファに縫い付けられた。 極黒副頭の力。
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