梅雨入り前

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そうして加持の家のドアを乱暴に閉め、そのドアへ背中を押し付けた。 「ばっ、ばか、誤解してんじゃねぇよ!」 「誤解って、誰にだ?誰にどこまでされた?」 怒りを含んだ青木の声。 カチャカチャと加持の腰元で青木の手が動いている。 「ま、待てって!」 そっちは何もされてねぇ、と言った途端ギロリとした青木の目と合った。 「じゃぁ、こっちは何されたんだ」 睨まれたあと、その痕がついた鎖骨をカリっと咬まれた。 加持のシャツはだらしなく腕にぶら下がっている程度。 南にやられたのと同じように、鎖骨から胸元を舐め下ろされて、背筋がぞくぞくとした。 青木の頭を離そうと手を掛ければ、やはり先ほどと同じように手首を掴まれ退けられた。 先ほどの繊細なそれとは違い、太く力強い指。 あぁ、やっぱりこっちだ。 不覚にも今、そう思ってしまった。 加持の抵抗が弱くなったのを不思議に思い青木が顔を上げる。 うっとりとした加持の顔。 なんだよ、拍子抜けに青木は眉を潜めた。 「広泰の、極黒の副頭だよ。」 人をからかいやがって。 ふとあの表情を思いだして、加持は俄かにイライラするのを思いだした。 「…南さん?」 するりと、加持の手を取っていた青木の力が抜ける。 加持はそれにムっとして唇を尖らせた。 さっきまで怒っていたくせに。
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