好きな人をおとす方法③

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そんなわけで佐倉川と宮野原のトップが並んでマックを頬張る。 窓の向こうの通りから、そんな様を両校の生徒が見たら目を疑うだろう。 「なぁ、椎名寝不足?」 「…ぁ?」 「目の下」 「…ぁー…」 思い当たる節の原因が隣にいるのを椎名は恨めしく思う。 「昨日電話しても何も言わねーし、」 言えるかボケと心で毒ずく椎名の頬に、小田の指先がさらりと触れた。 「っ!!?」 ガタンとテーブルが音を立てた。 「何だよ」 シレッとしている小田。 「なっ、何だよってテメーが何だよ!」 真っ赤な顔で怒っている椎名。 小田の手を振り払って。 「オレの気持ち知ってるくせに、」 そう言ってから、はっとして椎名は口を噤んだ。 かっこわりぃ、 「…あぁ知ってるよ。ちゃんとオレだって考えてんだって。学校のトップ同士だし?椎名だし?」 テーブルに頬杖を付きながら小田が口にする。 黙って俯く椎名。 聞いてるだけでドキドキして、頬が熱くなる。 「それから、付き合ってる女とどーすっかなとか?」 そこで椎名の目が僅かに大きく開いた。 小田はナゲットにマスタードをつけながら、別に何でもないよにして。 イロイロと椎名の頭を駆け巡る。 結局…女と天秤にかけられてるなんて。 かっこわりーの、オレ。 それから、やっぱりからかわれてんだと、開きかけた口にストローをくわえ椎名はやり過ごした。 黙りこくる椎名。 気付いて横目で見る小田。 「…おい、」 「……」 唇を尖らせ、小田側の手をズボンのポケットに入れ、ソファにずるりと低く座る椎名。 ストローを唇に挟んで。 不機嫌というよりかは、落ち込んだような。 (…おい、おいわかりやすいな…) 結局、店を出てそのまま。 じゃあと言葉少な気に手をふる椎名に小田は何も言えなかった。
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