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よく思えば…
「ムカツく…」
「あ?」
ダーツとビリヤード、卓球に、滅多に新刊の増えない漫画喫茶がごっちゃになったいつもの娯楽施設で。
もうカウンターとしては利用されていないそこの高めの椅子に座る椎名。
持ち込んだ缶ビールを片手に、あまり上手とはいえないダーツを見ている。
椎名の呟いた言葉に、隣の吉本が反応する。
「…ムカツく」
小田のくせに何様だ!?
オレと女を天秤に掛けるだなんて、ふざけんな。
「椎名?酔っ払ってんのか?」
オレがおとなしくしてるからって、からかいやがって!!冗談じゃねぇ!!
ブツブツ呟く椎名。
ちょうど、ゲームショップになっている1階から上がってきたのは宮野原、佐倉川に次いで実力のある紫雲学園の悪面。
ここが宮野原の縄張りと知っての行動に、周りがざわつく。
紫雲のトップはとりわけバカだ。
脳みそがもともと半分しかないまま生まれてきたようなヤツで。
無駄に喧嘩を吹っかけるのが大好きで。
「ちわー、宮野原の皆さーん」
ヘラヘラと両手をポケットに、やや前傾姿勢。
ほとんど無い眉で現れるのがトップの伍代。
取り巻きには年がら年中マスクの男に、ヒゲ面。
綺麗め不良の宮野原とは正反対にちょっと小汚い。
宮野原の睨みにも構わず、ズケズケとビリヤード台の間を抜けて。
背中を向けている、宮野原トップ椎名の後ろへ。
それから、
「ご機嫌いかがですかー」
「悪ぃーに決まってんだろが!!っ」
言ってすかさず、伍代の顔面に椎名の拳が飛んだ。
「うぁ、椎名…」
椅子から立ち上がり一歩後退する吉本。
「テメェーっ!!」
喧嘩を売りにきたくせに何すんだと、騒ぎ出す紫雲の連中。
「…出ねぇし…」
おとといから連続で着信無視。
小田は切断中になった携帯をじとりと恨めしそうに見、パタリと閉じた。
「んな、怒るだなんて思わなかったし…ツカ・・・」
すげぇ可愛いし…
小田はバイクを走らせる。
自宅にいったが不在。
どこに居るだなんて分かりもしないが、とにかく無性に会いたかった。
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