好きな人をおとす方法③

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確か…もう少し行けば、街の入り口にある雑居ビルが見える。 宮野原の溜まり場だ。 看板の派手目なネオンが近づいてきて、小田は速度を緩めた。 (オレがノコノコ行くわけにゃいかねーんだよな、) 完全にバイクを止める前に、ガシャァーンと窓の割れる音。 それと一緒に駐車場に落ちてきたのは椅子。 ドッと小田の目の前に落ちた。 「っあ?」 宮野原の縄張りで喧嘩など穏やかではない。 それから椎名もいるのではないかと、小田はバイクを止め階段を駆け上がっていた。 「椎名さんっ!」 「椎名!」 仲間に抑えられている椎名。 察するに寝そべっている紫雲の連中を倒したのにも関わらず、暴れる椎名に周りが困っている。 そんな状況だろう。 それが…きっと、 自分のせいで荒れているのだろう。 そう思うだけで、 (やべぇんだけど…) 小田はめまいがした。 今すぐ抱きしめて… 「ぅあっ!小田だ!」 こんな時に最悪!と宮野原の連中が声を上げる。 血濡れの拳、椎名の顔が小田という名前ですうっと上がる。 「やべー吉本!」 誰かが小田の接近を阻む前に、ガシッと、小田は椎名を抱きしめていた。 否、担ぎ上げていた。 「わりぃな、大将借りてく」 想定外の出来事に周りは呆然した。 担がれた本人もだが。 騒ぎ始めたのは駐車場でバイクのエンジン音がしてからだった。
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