好きな人をおとす方法③

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「お前っ!!」 走ってしまったバイクの後ろでどうすることもなく、椎名は声を上げる。 「るせぇよ、黙って捕まってろ。」 結局、人気のない公園まできて。 背もたれの無いベンチを跨ぐように座り、向かい合っている小田と椎名。 「…何してくれてんだよ、」 小田を目の前にして些か冷静になった椎名。 バツの悪そうに視線を逸らした。 「何って、椎名のほうだろうが、何可愛いことしてくれてんだよ」 その言葉に椎名のコメカミがひくりとする。 「テメェ、そーいうこと…」 続けようと思ったのが、彼女が居るくせに言うなだったが、あまりにも情けなくてやめた。 その代わりフツフツと沸いてくるのが、先ほど店で暴れた感情。 「小田のくせに、なんだよテメェ!可愛いとかバカにしてんのか!?」 誰も居ない公園にしては大きな声。 「椎名。」 立ち上がる椎名を座ったままの小田が見上げる。 「もーヤメだ!ヤメ!テメェのこと好きなんてヤメだ!」 くそっと、荒々しい声で叫ぶ椎名。 だけれど、その声が怒りだけでないのを小田は気づいている。 苛立ち、嫉妬、諦め、切ないの、イロイロ。 「別に、ヤメる必要ねーけど…」 「ふざけんな!何様だテメェ!」 小田の胸倉を掴みあげる椎名。 間近に迫るお互いの顔。 すげぇ告白。 好かれてんのに、怒鳴られるなんて。 マジ、たまんねぇんだけど。 自分の胸倉を掴んでいる椎名の手を逆に掴んで、引き寄せる。 それから、その騒ぐ椎名の唇に 「…ンっ…!」 口付けた。 掴んだ手に力を入れて、逃げる椎名の頭を引き寄せる。 角度を変えて。 「…はァ…」 クタリと椎名の体から力が抜け、小田がようやく椎名を解放した。 よろけて元座っていた椅子にへたりと腰を落とす椎名。 顔が真っ赤で。 「…お、小田っ!?」 先ほどの剣幕は消えていた。 小田も椎名の正面に座りなおす。 涙を溜めた椎名の目尻に指を伸ばし、親指の腹で拭いながら。 「好きだぜ、椎名」 理解しきれないで、目を丸くしている椎名の唇に小田は再び口付けた。
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