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「あの…大丈夫ですか?」
控えめにかけられた声に私ははっと我に返った。
「お体の具合でもよくないんですか?」
顔を上げると目の前には一人の女性が立っていた。
まだ二十歳を過ぎたぐらいなのだろう
腕には白い布にくるまれた赤ん坊を抱いていた。
「あ…いえ、大丈夫よ。ごめんなさい」
私は思わず苦笑いした。
どうやら美由の事を思い出して、ずいぶん長い事立ち止まっていたようだ。
「本当に大丈夫ですか?顔色よくないですよ」
心配そうに私の顔を覗き込む彼女を見ていると、まるで美由がそうしているかのように思えた。
もし美由と再会できていたのなら、きっと美由は彼女ぐらいに成長していただろう
そして幸せな結婚をして、可愛らしい孫も産んで…
私は軽く頭を振った。
そんな現実、ある訳がないのだ。
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