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「お母さん!」
「!!」
私ははっと振り返った。
今呼ばれたような気がしたから…
「ただいまっ!」
「おかえり、濡れなかった?」
「うん!」
私の後ろには親子が立っていた。
赤いランドセルを背負って、傘を差す小さな女の子を迎えに来た母親
雨の中でも少女は明るく笑う
母親が迎えに来てくれたのを喜ぶかのように
「…」
私は親子から無言で目をそらすと歩き始めた。
私の願いは叶わない
叶うはずがないのだ。
私の名前は美和子、現在40歳だ。
夫と二人暮らし、子供は…いない。
本当はいたのだ。
けど私は…
自分の願いのために我が子を捨てた。
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