天条家

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やはり天条家の人間は凄い。 他人の小さな悩みを一刀両断する器と、断固たる意思や信念を持っている。どんなときでも自分というものを持ち、自分の思うままに行動することができる。 ……それがどれだけうらやましく、憧れるものか。それは条一がよく知っている。 三流でも良い。そう思える三流こそが真の意味で一流なのではないか。 いつか、こんな強い人間に成長したい。条一は密かに心の中でそう決意し、父親や姉に合わせて笑みを浮かべた。 「―――さて、と。条一くん。 この状況から察するに、君は楓と修練をしていたね?」 「え? あ、はい。そうですけど…」 「そうかそうか!いやぁ~青春だね!青春だね!」 腰に手を当て、愉快そうに豪快に笑い声を上げる稜成。 条一としては一体何が青春なのか分からなかったが、稜成の次の言葉は容易に理解することができた。 「よし!それじゃあ久しぶりにお父さんも修練に参加してあげよう!」 「え゛」 「ちょ、ちょっとお父さん!」 条一は顔を引きつらせながら、そして楓は焦ったような表情で各々言葉を発する。 「あ、あの…稜成さん。流石にそれはちょっと……」 「なんだ釣れないね。もしかして嫌なのかい?」 「そ、そういうわけでは…」 昨日楓に修練を提案されたとき以上に条一は額に冷や汗を浮かべ、目が泳ぐ。 何度も言うが、稜成は日本を代表する殺し屋といっても過言ではないほどの実力者。 条一は息子として・弟子として彼から戦い方を学んだのであり、先ほど条一を赤子のようにあしらった楓も同じ。 つまり、条一より数段実力が上の楓よりも、稜成は更に圧倒的に上。 おまけに今の条一は満身創痍。 それなのに修練をしてどうなるのか。 最悪の未来が条一の脳裏を横切る。そしておそらく楓も、それは流石に無茶だということを理解しているのだろう。
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