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義父は、元々は大工でした。心臓が悪く、早期に退職していました。
人の家は建ててきましたが、自らは県営団地に暮らす生活をしていました。
私達が家を建てると聞き、設計図を見ては、文句ばかり言っていました。
「方角が悪い。もう少し向きを変えなさい」
「窓はこの位置だと不便だし、小さい。どうにかならんのか?」
義父の顔色を窺いながら設計図が出来上がっていきました。
マイホームでありながら、私達のマイホームではない家の設計図がそこにはありました。
地鎮祭の数日前、まだ夜も明ける前、義父は車で自損事故を起こしました。
以前も、孫が見たいと早朝、眠剤が切れる前に運転して、自損事故を起こした事があり、「またか…」という心境でした。
事故について夫が電話で聞くと、「家の向きが悪いと散々言うのに、従わないから、お前たちを説教しに行く途中だった。だから、事故はお前たちの所為だ!」と言うのです。
この後からです。夫が内科で安定剤を処方されるようになったのは。
しかし夫は、私と子ども達に心配をかけまいと、その事を内緒にしていました。
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