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その日、私は一人で山道をドライブしていた。
その山に行くのは随分久し振りだった。
道路のかけかえや、落石等が相次いでいて、よく通行止めになるからだ。
新しい道路は、辺りの景色も随分様変わりしていて、昔の様相はほとんど無く、見る景色がとても新鮮だった。
そんな景色に半分見とれながら車を走らせていると、前方に新しいトンネルが現れた。
以前トンネルでイタイ目を見た私だが、目の前にあるのは新しいトンネルということもあって警戒心など全くなくトンネルに入って行った。
すると、何故か車が反対車線に向かって行く。何度切り直しても反対車線に向かって行ってしまうのだ。そのうち耳ではなく頭の中で声が聞こえはじめた。「遊ぼ…。」
小さな子供の声で何度も何度も「遊ぼ…。遊ぼ…。」
車には私しか乗っていない。この声の主は明らかに私に遊ぼうと話し掛けているのだ。
こんな新しいトンネルにお化けや幽霊など出るはずが無い…。空耳だ❗と思うことにした。が、車は相変わらず反対車線に向かって行く。
頭の中には相変わらず「遊ぼ…。」の声が聞こえ続けている…。
トンネルは途中から緩いカーブになっていて私の車はそのカーブに反して進もうとしている。つまりトンネルの反対車線の壁に向かっているのだ。
直感的に止まっちゃいけないと思った。
カーブのちょうど中央辺りに差し掛かった時、トンネルの壁に比較的新しい傷と、その下に花と飲み物などが手向けられているのが見えた。
その時、声の主がこのトンネルの中で亡くなったのだと理解した。
「ごめんね…私は一緒に遊んであげられ無いの…。」そう何度も心の中でその子に謝った。
暫くすると車は真っすぐに走りはじめ、いつの間にか「遊ぼ…。」の声は消えていた。
そして無事にトンネルを通り抜けることが出来た。
一本道なので、帰りもそのトンネルを通らなければなかなかったが、何故か帰りにはその声は聞こえ無かった。
怖いという感情は確かにあったのだが、恐怖などとオドロオドロしいものではなく、遊んであげられないことが可哀相に思えた。
後日聞いたところによると、やはりあのトンネルで小学校入学前の男の子が亡くなっていた。
亡くなったのは男の子だけで、彼はぶつかった衝撃でフロントガラスを突き破り、路外にほうり出され壁と車の間に挟まれ死亡したことがわかった。
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