オリエンテーション

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「という訳で我が大学が扱ってる水田は棚田も含めて30haあります」 周りはほぉーっと言っていたりするが、はっきり言って非農家の翼には理解しえない単位であるのは確かで… 「すいません!どれぐらいの大きさですか!」 喋っていた担当の先生がうんうん頷いて 感心しながら翼を見た後に水田を見渡す 「1haが一万㎡です それを元に考えてみてください」 ややこしくも遠まわしにする先生に唇をとがらせながら考える 「分からん… とにかく万単位なんだから凄いんだろう」 そういう事にして翼は群れる生徒の後ろでベンチに座って空を見上げた 「自然が好きで動物好きだけど、まさか農業大学に来る事になるとはなぁ…」 先生が去年の農大の全生産物の量を話しているようだが やはり凄いのかどうか分からない 生徒は驚いているから凄いのかもしれないが… 俺は組んでいた足を地面に付け、立ち上がった 「おう、翼!先行は何を選んだんだ?」 急に後ろから声をかけられてビクつくが、俺は迷わずソイツに答える 「稲作中心で他作物と、ホルスタインやらの畜産」 無二の親友 高橋直人 元々こいつのアドバイスでこの農大に来たのだ 「その選び方ありなのか…?作物なら作物中心にすればいいのに」 頭を捻る翼 直人は周りに目を配っている 「じゃあ、次は畜産用の飼料の圃場と牧草地に行きましょう」 先生がそう言うとぞろぞろと生徒が動き始めた 直人が翼に顔を向ける 「いくぞ翼」 直人がそう言うと少し気難しそうな表情で翼は呟く 「トイレ行ってくる… 先行っててくれ!追いつくから!」 そう言って翼は駆け出す 直人は頷く間もなく、溜め息を付いて生徒の群れに付いて行った 「ふぅー… うっし!行くか!」 駆け出す翼 元の位置に戻って地図を見直す 適当に暗記して地図をポケットにねじり込むとまた駆け出した さすがに畜産が先行を取っているとなると、少し焦った 「森抜けた方が早そうだな!」 適当にそう考えて雑木林に突っ込む翼であった 農業大学は敷地から考えると相当な広さで… 今翼は明らかに迷っていた… 「馬鹿に迷ってる俺って情けねー…」 山道を突き進む翼 どこに向かっているかは分からない ただただ人の声が遠ざかるのが分かった
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