オリエンテーション

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「マジで…ここどこだ…」 広々とした丘に出るものの、目の前に広がるのは山ばかり 「本当にここ日本か…?」 息を切らせながら石の上に座り込む翼 なんだかどうでも良くなった気分で景色を堪能する 「やっぱ都会育ちの俺にとっちゃ、こういう所は癒されるなー…」 芽が出始め青々くなっている木々 そこから鳥が飛び出し羽ばたいていき 上でトンビが鳴いている 「はぁー…癒されるわー…」 気が付くと隣に誰かがいた 翼はゆっくりと見上げる 「だ、誰すか?」 そこにいたのは白衣を着た老人 ただ遠くを見つめていた 自分と一緒に迷い込んだとは考えにくいので なんだかまず人なのか疑ってしまうが 老人はゆっくりと翼に振り向き、呟く 「君は自然や動物は好きかい?」 考える事なく笑顔で頷いた 「当たり前じゃん!」 老人が目を凝らして翼を見つめ また丘からの景色を見つめた 「自然、それは地球そのもの… 地球に生きる以上、一緒に共同で 人間は生きていかなければならない…」 翼も景色を眺めながら頷く 「俺もそう思う… 人間が住みやすい世界にするために自然を破壊するのには納得がいかない… やっぱ最低限な営みってのをしたほうがいいと思う」 老人が長い髭をいじりながら笑みを浮かべる 「今時そんな考えを持っている若者は少ないだろうに… それで最低限の営みとはなんだと思っているのかな?」 翼は自信を持って答えた 「農業かな 自然の力を借りて生きていく やっぱ農業なしじゃ人間は生きていけないわけだし、なんつうか人間の原点だと思うんだ」 老人は高らかに笑った 「良い志を持った少年じゃな! 気に入った! ちょっと来い!」 ちょっとどころでない山道を翼の手を引きながら走り抜けて行く 「は、はや!じいさん早いよ!」 こけ損ねる程の山道を物凄い速度で走る老人 翼はつい足元を見た 「ッ!!?」 老人は走っていなかった 足は地を離れ、飛んでいた 「ちょッ!なんでじいさん飛んでんだ!?」 老人は振り返らずに叫ぶ 「後で分かるさ!」 こうして空を飛ぶ老人に引きずられ翼は山を降りて行った
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