オリエンテーション

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「ぷはぁー!味は緑茶みたいだな!」 教授はなぜか慌てている 「ば、馬鹿者!一口でいいんじゃよ!」 翼は目をパチクリさせて呟く 「何か問題あるのか?」 教授は頭を抱えて頭を震る 「分からん…」 翼も少し焦るが、ニカッと笑った 「大丈夫大丈夫! 余計強くなったかもしれないじゃん!」 何が強くなったか分からないが、翼は笑った 「ま、まぁ…なんとかなるじゃろ…」 教授も妥協して溜め息を付いた 「一応試しじゃが…」 机に置いてある蘭を翼の前に差し出す 「こやつが何を言っているか分かるか?」 翼は分かるわけないと普通に答えようとしたが… 『まっじこの部屋居心地悪いんだけど… どうにかなんねぇのかよ…』 翼は沈黙する他なかった 教授は返答を待っている様子なので一応答える 「この部屋居心地悪いって愚痴ってます」 教授はふむと言って唸る 「愚痴っているのか?」 翼は頷き、蘭に顔を向ける 「この部屋の何が悪いんだ?」 蘭はうねって口をあんぐりとさせた 『人間に話しかけられるなんて初めてだ… あー…ジメジメして日がほとんどあたらないんだ』 翼は夢でも見ているかのようで、変な溜め息が出てしまった 「教授…この蘭は日当たりのいいとこがいいらしいです…」 教授は目を丸くして蘭を見つめる 「そ、そこまで正確に話すのか? というか…会話出来る…?」 翼は唖然とした 「教授は会話出来ないんですか?」 教授は翼に迫ると、背を向けてまたビーカーをいじりだしだ 「私は植物からの一方的な片言しか聞こえないんだ」 翼はなんだか複雑な気持ちで蘭を見つめた 「あ…!オリエンテーションの最中だった!」 教授は振り返って頷く 「行ってきなさい 遅れた理由は私の名前を出せばいい」 翼は無駄に大きく頭を下げた 「お世話になりました!」 教授と山の中で会わなかった事を考えると翼は頭を下げるしかなかった 「いやいや、良い若者に出会えて私も満足だ その力を有効に使ってくれ」 翼はより頭を下げ、背を向けた 「それじゃ、ありがとうございました!」 教授はポツリと聞こえない声で呟く 「すまない翼… 君ならきっとやり遂げてくれる筈だ…」 物静かになった研究室で教授はポツンと立ったまま拳を握り締めた
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