オリエンテーション

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隣で容赦なく食べる直人を見てなんだか食欲をなくす翼 トマトは叫んだ 『躊躇しないでください! 新鮮なうちに美味しく食べられるのが本望なんです!』 翼は少しだけ溜め息を付くと丸かじりした 「美味い!」 トマトはそっと微笑んだ 一通り食べると、翼はしっかりとごちそうさまを言ってハウスを後にする そして農大を一回りしたご一行は体育館へ向かった 「えー今日はお疲れ様でした 良いお天気に恵まれー…」 校長の長々しい講話をきいていたその時… ズガァアアンッ!!! 突然体育館の壁が吹き飛んだのだ 体育館内は叫び声や話し声が行き交い、完全に沈黙した空気を打ち破った その時翼は思った 「お、おい!なんで直人逃げねぇんだよ!」 皆は席から立ってその吹き飛んだ壁を見たりはするが誰も逃げようとはしない 「だって何かぶつかっただけだろ?」 今翼が見ている物と一致しない回答に翼は混乱する 「な、何を言って… 今突っ込んで来たのは確実に…… 巨大な猪だろ!?」 直人は笑う 笑う直人を嘘だろ…と呟いて苦笑いする 「いや何もいないじゃん?」 翼は驚愕した 自分にしか見えない… そう考えるとどうしていいか分からなかった 「確かに最近そういう事故起きてるけど… 大丈夫でしょ」 直人は澄まし顔 翼はゆっくり近付いてくる巨大で恐ろしい猪に顔を歪ませるだけ… 「翼!君には見えている筈だ!」 教授が走ってきて翼に叫ぶ 翼は振り返って教授の元に駆け寄った 「あ、あれどういう事すか!? 意味分からないんすけど! あれ俺だけが見てる幻覚とかじゃないんすか!?」 翼は教授の肩を掴んで訳分からず揺らす 教授はうつむくがすぐに猪がいるであろう方向を向く 「後で説明しよう… 今は…君にどうにかしてもらうしかない 見えているのは翼…君だけだ」 翼は訳分からずに拳を握り締める 「あんなデカいのどうしろって言うんですか!? 俺人間ですよ!?」 教授は唇を噛み締める 「アイツは人間に無力さを味あわせる気なんだ… 止めなければいかん… ……君なら説得出来るやもしれん…」 翼はとにかくどうなかしようと拳を握り締める 「早い話… アイツと…話しておだめりゃいいんですね」 教授は頷いた
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