Allegretto🎶

～約束～

ある大きな屋敷の前に若い男女が佇んでいる。

難波一樹と鈴宮奏だった…

「奏…大丈夫？」

「私は大丈夫です……一樹こそ…」

「ああ…とにかく入ろう…」

難波は門のインターホンを押した。

「はい…どちらさまでしょうか？」

家政婦の応対の声が聞こえた…

「俺だよ…開けてくれ…」

「まあ！お坊ちゃま…お帰りなさいませ！」

家政婦は慌てた様子だった…そしてすぐに門が開いた。

一樹と奏は屋敷の中へと進んで行った。

玄関のドアが開かれ家政婦が出迎えた。

「一樹様…お帰りなさいませ！いつ日本に…」

「さっき着いた…親父は？」

「書斎においでです…あっ…そちらは鈴宮様…いらっしゃいませ…お久しぶりでごさいます！」

「ご機嫌よう……お元気でしたか？」

奏は秀二達と何度か難波の屋敷に来た事があった。

「とにかく親父に会おう」

「ええ…」

一樹と奏は家政婦に案内され書斎に向かった。

「コン コン」

「なんだ……」

中から男性の声が聞こえる…難波誠二 難波銀行社長 一樹の父親だ。

「一樹様がお帰りでごさいます。」

「なに？……入れ…」

家政婦がドアを開け一樹に続き奏も中へ入った。

「親父…今帰ったよ…」

「一樹……よく帰ってくれた！…おや？君は確か……」

「鈴宮奏です…大学の後輩です…ご無沙汰しておりました…」

「おお…鈴宮ん所の…久しぶりだね…鈴宮は元気かね？」

「はい…お蔭さまで…ありがとうございます…」

難波誠二と奏の父親は幼なじみでもあった…

「所で一樹……決心が出来たのか？」

「その事で奏とウィーンから戻ってきたんだ」

「うん……それで？」

「俺は親父には悪いが銀行を継ぐ気はない…ピアニストになりたいんだ…」

「何だと？…」

「それと奏とゆくゆくは一緒になるつもりだ…」

「奏君と……それは良かった…鈴宮とは気心も知れているし奏君は素敵なお嬢さんだからな…だが…継がないと言うのは納得行かない…」

「俺の夢なんだ…大学を出たらコンクールに出てデビューするつもりでいる…」

「では聞くがコンクールで落選したらどうする…」