適性試験

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かしゃん と空から短剣が滑り落ち、金属独特の音を立てる。 そう、まるで空気に足場があるかの如くコウは浮いていた…いや立っていた。 「…なにこれ」 小さくそう呟くと、下から見上げる形でいた女はおかしそうに笑った。 コウは思わず驚愕の表情を見せて呆気にとられたような声をあげる。 「…Great!(素晴らしい!)」 「へっ?」 パチパチと手を叩いて、英語を話すと女もコウと同じくらいの高さまで飛んだ。 「…私たち魔族にはね、喋れない言葉なんてないのよ」 先ほどの真剣な目とは裏腹に、涼しい程の笑顔をみせる女だが、コウは"魔族"と言う言葉に目を見張る。 思わず聞き返そうとするが、女はコウの唇に人差し指を当てて静止させた。 「この説明はまた後で。それよりも、ほら手を出して」 「はい?な、なんで……」 「いいからいいから」 コウが慌てて身を固くするも、女はコウの手首を強引に掴み何かを手渡した。 「……………」 そっと手を開くと、そこには真っ黒の石。 「…それは通称、ブラックストーンって言う、ダークマターから生まれた宝石……って言ってもわからないわよね。 ま、黒い宝石と思ってて」 「はぁ…」 曖昧に頷くと、女は更に言葉を続けた。 「その石には、魔力が詰まっているの。この世界の住民達はこんな魔石が無くても魔法が使えるけど…貴方のような人は使えないでしょ?」 コウは黙って頷く。 「そのための石なのよ。これで貴方も魔法使えるってわけ」 それを聞くやコウはまるで小さな子供のように目を輝かせる。 そうしてその黒い石をシゲシゲと眺めた。 「凄い…どうやって使うんですかっ!?」 「ふふ…今からソレを教えるわ。第二次試験よ」 「は………………い?」 聞き間違いだろうか、と女に目を向けると、女はニコニコと笑ったままで告げた。 「さっきのは、第一次。まさかあんなチンケな試験だけで合格が貰えると思ってたの?」 ――思ってました。 そう言えるわけもなく、コウは肩をガクリと落としてまた元の地面に降り立った。 その後を追うように女も降り立つ。 「では、魔法の説明にはいるわね?」 女は降り立ったついでに壊れかけた短剣と自分の長剣を手に取り腰に装着しているホルダーに差し込む。
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