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「はぁ…」
夕焼けが差し掛かる高校の帰り道。
篝火 コウは軽いため息をつきながらゆっくり歩いていた。
(……つまらない)
黒板に白い粉の塊で書かれた文字を、一心不乱にノートに書き写す毎日。
その教科担当の人物が、ガリガリと何か説明しながら黒板に文字を書いていく。
僕はソレを理解しながらノートに写す。
その時間が終わったなら、次は下校の時間。
まぁ何か起きるワケもないのでのんびり…でもなくやっぱり普通、何時も通りの速さで帰路につくわけで。
その状態が、今。
別に目立ちたいとか、モテたいとかそんなのじゃなくて。
ただ、少し刺激が欲しい。
いきなり降ってくる、唐突な雨とかそこらのレベルではなく。
強盗を捕まえて一躍有名人だとか、ここまで高いレベルでもなくて。
先生が入院したとか、クラスメートがTVデビューしたとか、ここら辺の刺激。
(なぁんて…。あるわけ無いんだけど)
ちょっとだけ顔に笑みを浮かべて、あと2mくらい先の、家のドアノブに手を伸ばした。
がちゃり。
鍵がかかってないドア。
コレも何時もだったりする。
「母さん、いるの?」
返事はなし。
「……また鍵閉めないで出てったな。あのバカ」
呟く位小さく言うと、自分の部屋に入る。
殺風景で、壁はポスターも落書きもない。
あるのは机とベッド。
僕はベッドにダイブした。
「ふー…。今日も面白い事はなかった………」
言いながら、閉じて行く瞼。
(どっか……)
うとうと。
完全に閉じた眼。
「何処か遠くに行きたい…」
そうして僕は、学生バッグを握ったまま眠りについた。
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