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「前に?誰か来たんですか?」
「あぁ。つい30分程前にね、随分無礼で生意気な少年が一人。あまりに煩いから部屋に閉じ込めてある」
先程と全く変わらない笑顔で言いのけるレディヌ。
なんだか、悪寒がした。
「あー…、ちょ…っと僕用事を思い出したんで失礼します」
コウは怖くなり席を立つ。
が、レディヌはコウを笑顔で見据え。
「この国ではね、話の途中で席を立つ事は無礼とされてるんだ」
パチン
レディヌの指が鳴る。
それと合図に、兵隊達がコウを取り囲んだ。
「くっ…」
「はは、何を怖がる必要があるのかな?コウ」
レディヌも立ち上がり、一歩ずつ歩き出した。
口許は怪しく上がり、目は細められる。
「アンタ…どういうつもりで…?」
「どういうも何も…君が何故立ち去ろうとしたのか分からないのだよ」
カツン、カツン。
「私は君と話がしたいだけさ」
カツン、カツ…
レディヌが目の前に来る。
「…いい人だと思ったのに…」
「そうだよ、私は何も害は与えないさ。悪い人じゃあない」
くす、と笑う。
「君は何か思い違いをしている……。先程の少年は酷い扱いをしたが、コウまで閉じ込める気はない」
レディヌの右手が、コウの頬に添えられる。
コウの身体が無意識に跳ねた。
「……核に迫ろう。君は何故この世界に来た?話しておくれ」
「なんで…って…僕にもなんでこんなトコに来たのか…」
恐る恐る言葉をつむぐが、レディヌは満足する答えがえられなかった様だ。
「そうか…。なら無理矢理聞くまでだ」
「へ?……ひゃあっ!?」
頬に添えられた手が、滑るように首筋を這う。
「な…ぁ、んですか…?」
「静かに。
Яе……κμνωγ」
「?」
発音的には、
『リ・クラマター』
と聞こえた。
と、変な呪文を唱えた瞬間、コウの首筋に光がほとばしった。
その光は、瞬く間にコウを包んだ。
「な…」
「いいかい、良く聞くんだ!今から君はこの世界に適正か判断する!流れに身を任せていればわかるだろうが、絶対に流れに反してはいけない!
そしてソコに話した少年が――…」
ここで、レディヌの声は途切れた。
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