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「敵艦からの砲撃が無いのは妙だな」
パイロットスーツを着込み、アンシャルに戻ったアルギスは、コックピットに腰を掛け操縦桿を握った。
《上空の雲の影響》
「なら雲を抜ければ」
《敵艦は攻撃を開始します》
また一つ溜め息をつき、アルギスは発進の時を待つ。
最悪の場合此処で20年にも満たない人生が終わりを告げる。
《秒読み後発進のタイミングを譲渡します。秒読み開始残り00:30》
アルギスの耳に届くタービンの駆動音。
徐々に出力を上げているのだろうか、シャトル全体が微かに揺れ始めた。
《00:15》
「撃ち落とされんなよ」
操縦桿を握る手にも力が入る、大気圏離脱なんて初めての事。
しかも頼れるのはAiの自動操縦のみだ、不安にもなる。
《00:05》
ディスプレイに表示され、ただ減っていく数字を見つめる。
厚く掛かるる雲の先に待つのは生か死の2つだけなのだ。
《00:00、発進準備完了》
「どうせ此処にはもういられないんだ……行くぜ!」
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