閉店の知らせ

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今日、俺田島秋斗の葬儀屋『田島葬儀店』は60年の歴史から幕を閉じた。 「何故こうなるんだ…」 しかも理由は不況じゃない。 ダイヤモンドを狙った犯罪に巻き込まれ、俺の店は破壊されてしまった。祭壇も生花も霊柩車も、そして自宅兼店舗も破壊された。 全て悪いのは破壊した奴だが、あの万能薬が出来る前は葬儀屋襲撃なんて無かった。俺が思うに万能薬が出来てから、俺みたいな田舎の葬儀屋は壊滅状態だろう。 「おーい、秋斗!片づけに来たよ」 「ありがとな香織」 半壊した店兼自宅の前に現れたのは、幼なじみの香織だ。少しお姉さん気質な所がウザイが、こういう時は助かるな。 「“くじら加盟店”にならなかったの?なれば護衛だってしてくれたのに」 「年間50万だぜ。しかも加盟料で100万。へんぴな田舎でやる俺には無謀だぜ」 「でも、代わりに一生助かるのに…」 葬儀屋の未来は2つ。 くじらこと『武装葬儀業 鯨』の加盟店になるか、葬儀屋を標的とした強盗『葬儀屋荒らし』に襲われて潰されるかの2つだ。鯨の本部や支部がある都会は安心だが、田舎は所詮潰されるのがオチだ。 俺は落胆した表情で、香織と共に片付けをした。思い出の品だけ箱に入れ、あとは粗大ゴミと共に捨てた。 その夜、仮住居で俺と父と母は今後について考えた。父は俺と同じ葬儀屋だった。母は不況を理由に最近水商売を始めた。 「あー…父ちゃんどうしよう…もうおしまいだ。もう人生終わりだ…」 「あんた、そんな事いわないでよ!無理ならアタシが稼いでやるよ!」 「そうだぜ父ちゃん!俺、頑張るからさ!」 先行き不透明。頑張るとは言え俺にある取り柄は葬儀のみ。 携帯を開いてバイトを探してみるが、思えばバイトをしたことがない。 「本当に俺ら家族は終わりなのかな…」 しかし、偶然にもあるものが目に留まった。 それは、『武装葬儀業 鯨』の広告だった。 『武装葬儀業 鯨』は、政府機関の1つ。遺族の為に死体を守り、国が銃刀などの武器使用を公認した唯一の機関だ。“鯨の如く堂々たる漆黒の戦士”と呼ばれ、男女共に人気の職業だ。 「葬儀屋だが、俺にはやっぱり無理かな…」 しかし反面、知識・運動・センスが問われる為に1万人受けても3人受かれば凄いと呼ばれている。難関大学や有名アイドルオーディションなんて目じゃない。 今後の予定は明日考えよう。そう思い、俺は疲れた身体を休める事にした。
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