閉店の知らせ

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次の日、建築会社が我が家の解体工事を始めた。 一旦更地にして、また我が家を建てるしか方法がないらしい。 「こうやって見ると、俺の家はデカかったんだな」 1時間後、我が家兼店は更地に戻った。だが我が家にもう金なんて無い。襲撃された時に、レジや金庫も盗まれた。 最早、希望の未来なんて見れる状況じゃなかった。 重い足取りで仮住居に向かおうとしたその時… 「此処の被害も深刻化しているな、みるくの姉貴よぉ」 「うん、そうだな黒子の兄ちゃん!!」 更地の前に現れたのは、黒髪セーラー服少女と、明らかにおかしい喪服姿のワニ頭男だった。 確かに俺は小学生の頃、ゴリラ顔の女を見たことがあるが、ワニ頭は流石に見たこと無い。て言うか特殊メイクか? 「あ…あの、あなた達は何者ですか?」 「アタイら鯨のAF9の者。ひと呼んで天才少女の小野みるく様よ!」 「同じくAF9の黒子大(くろこだい)だ。調査をしに来ただけだ」 「クロコダイル…)本当に鯨なのか?つーか、AF9って何ですか?」 「こら!アタイの言うこと信用出来ないのか馬鹿男!?」 「なっ生意気な!」 「姉貴落ち着け。まずAF9は我々の部隊名だ。あと、コレを見れば納得するか?」 見せたのは、胴体に“94”と書かれた鯨のマークの手帳。間違い無い、彼等は本物の鯨の連中だ。 「ところであんた葬儀屋か?」 「まあ…ただ昨日潰れたけど。何故分かるんだよ?」 「線香と複数の花の香りだ。花屋なら線香の香りなんてしないだろ。そうだ、また葬儀屋やりたいなら此処に来い。まだ間に合うしな」 渡されたのは、鯨本部の住所が書かれた名刺だった。名刺を渡すと、2人は近くに停車しておいた霊柩車に乗って行ってしまった。 だが、何故だか2人のお陰で希望の光が戻ってきたような気がした。これは千載一遇のチャンスかもしれない。上手くいけば家どころか大金持ちも夢じゃない。 「もう、これしか俺には方法がない!」 俺は急いで両親の元へ走った。途中、香織に会って止められたが、それを無視して両親の元へ全力疾走した。 そして仮住居に到着し、早速俺は両親に宣言した。 「父さん!!母さん!!俺さ、上京して鯨に入る。そして以前のような生活に戻してみせるよ!」 お茶を飲んで和んでいた2人は唖然とし、おもわず手に持っていたお茶をこぼしてしまった。 それだけ衝撃的な事ぐらい、俺だって分かっていた。
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