序章

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わたしの城 (6畳くらいかな) を後にして、 自転車にまたがり、 坂道をのぼってゆく。 ああ、なんか、春っぽくて すごくすてきだ、 風も空も、町のひとたちも。 桜並木の川沿いを走り、 いい匂いのする パン屋さんを横切り、 そしてわたしは、 町屋を改装した、 いかにも古風な本屋に到着する。 通りの隅に佇むその店は ツタが木造の壁を這って 瓦屋根まで到達している。 少しくすんだ丸太の看板に書かれた 本屋の名前 「ユメギワ書房」 んん、 なんてわたしの心を くすぐる名前だろう。
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