三章

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ワークデスクの上の筆を、手にとった。 押し入れの中から、イーゼルと、 わたしの腰くらいまである大きさの キャンバスを取り出す。 絵だ、絵を描こう。 テディベアをベットにまた座らせ、 音楽をかける。 御影さんと初めて夢の中で会った あの草原に合う曲。 パレットには、 たくさんの緑色絵の具を出す。 少し肌寒い風 彼の揺れる髪 朝もやのような、くすんだ空。 「ラララ」 歌いだしながら、 下書きもせず 一気にキャンバスに筆を入れた。 あの日、 あの日、 あの日 あの日が描きたい  あの瞬間が描きたい テディベアはしばらくしゃべらなくなった。
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