序章

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自転車を店の脇にとめて、 カランカランとドア鈴をならし、 「おはようございます」 と呟くように言った。 店内は わたしの部屋2個分くらいしかなくて、 こじんまりしている。 そのくせ、 びっしりと古い本たちが 大量に店内に積まれていた。 木製で背の高い棚たちが、 いくつも並んでいて、 入り口からの朝日を浴びていた。 CLOSE と 看板をさげている朝10時、 材木とコーヒーの香りが漂うその店には、 店長しかいなかった。 「おはよう、ええと、  今日からだよね、バイトのー・・・」 店長が奥から、 コーヒーカップを片手に 小走りでやってきた。 背が高くてとても細い、 黒ぶち眼鏡をかけた、 ノッポさんみたいなおじさん。 Yシャツに 深い赤のチョッキを着ていて、 色褪せた緑色のズボンをはいていた。 「白川です、白川サラ」 「そうそう、白川さんね。  改めて、店長の大宮です。  よろしくね。」 とても感じの良い人みたいで、 柔らかい声で話す彼に、 緊張していた肩の力が 抜けてしまった。 電話面接みたいなものだったから お店の人と会うのさえも 今日が初めてだ。
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