B

2/6

268人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
玄関のチャイムが鳴って、まだ痛い頭を抱えて二階から降りる ガチャリとドアを開けると、同じクラスの戸田がいた。 戸田は俺の隣の席で、大人しく目立たないけど、予習見せてくれたり、当てられそうになると教えてくれたり、頭がよくて、気が利く奴だった 「戸田、なんで?」 眼鏡をかけた戸田が伏し目がちに 「あ、ぐ具合どう?」 俺は風邪のため一週間学校を休んでいた。 「うん、まぁ大分いい感じ。明日から行くかも」 「そう、よかった。あの、これ、…亀梨君が休んでる間、授業のノートとってたんだ。」 よかったら、とオズオズと何冊かのノートを胸の前に差し出す 「へ?マジで?」 前から思うに何でコイツ、ここまでしてくれるわけ?決して脅してるわけでもねぇのに 俺そんな恐い顔でもしてる? ここまでされると、若干ヒく 「サンキュ。」 一応、笑顔で礼を言うと、まだ何か言いたげな戸田が、家の中を気になるような視線で奥を覗きこむ 「か、か亀梨君っていい家に、す、住んでるんだ、ね。」 カミカミの戸田。 「まぁ、うちは金だけはあるからな。親父は単身赴任で滅多に家に帰ってこないし、母親はいねぇから」 って、何でこいつに家族構成を話してんだろ 「えっ!じゃ亀梨君は、ほとんど家に一人?」 パッと顔を上げた戸田は驚きを含んだ笑みに見えた 「兄貴が一人いるけど」 そ、そうなんだ。とまた顔を下げる 「あ、あのさ、……やっぱりいいや!ごめんね、長々と。皆、会いたがってるよ。……ぼくも。」 「え?」 語尾になるほど細々となる声が聞こえず、顔を近付けて聞き返す 「わっ!近いっ!な、な、な何でもないよっ!!じゃ明日、学校で、ね。」 そそくさと立ち去る戸田 変な奴。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

268人が本棚に入れています
本棚に追加