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「葉書を見ずともアリス様の事は事前に伺っておりました」
「………」
何とも胡散臭い、そう言いたげな神倶夜の冷酷な眼差しを店員さんはただ、微笑んだまま受け止める。
「…か、神倶夜…お兄、さま…?」
恐~る恐る声を掛ける。黒夜さまどころじゃないからね?このオーラ。
「わたし、嫁が手に入ればそれで良いんで店員さんにメンチ切らないで。いたたまれないんですけど」
「…神楽が良いなら別に」
つい、と横を向いたと思ってるとさっきのガラス小物のとこに戻ってしまった。
「神倶夜、どうしたんだろ…」
普段はあからさまに不機嫌な態度とかを他人に見せる人なんかじゃ無いのになぁ…。
「アリス様、こちらが懸賞の品でございます」
「あっ、はい、ありがとうございます!!」
考えに没頭していたが店員の声に我に返った。先ほどと同じような微笑を浮かべ、カウンターに恭しく乗せた。
「…何か高そうじゃね?」
福袋二つをくっつけたぐらいの大きさの箱で、黒を基調にした中で赤ラインが目を引く。
「当店自慢の品ですから、アリス様に必ずや気に入って頂けるものと思っております」
「うん、まぁ…美形な嫁さえ居るなら何でも良いッスよ」
ケースに保管─あっ、やべ。箱がねぇや。水槽ひっくり返して被せて置くか。
「って…─重っ!!えっ、ちょっ、店員さん!どうやって持ったのコレ!?軽く米俵並みの重さですけれども!!」
「精巧な作りの人形が箱に何体も入っておりますからね。重量もそれなりにあります」
店員さんが意外にマッチョだった事が判明。
なに、美形な嫁の為なら何のその!!連れて帰る!おれがこの手で。必ずや!!
「ぬぉおおおっ!!燃えろ、おれの底力ァアア!!」
何とか持ち上がり、重さで苦痛に歪んだ顔を笑顔に辛うじて店員に見せ、呆れた視線を向ける神倶夜と共に店を後にする事になるのだった。
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