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─†─
「…何なんだ?さっきの物音」
お玉とフライパンを構え二階への階段を上っていく神倶夜。
何故なら、妹─神楽の寝ぼけ方は危険。デンジャーだからである。ペンやら何やらが飛んでくる。
─コンコン。
「神楽、起きてるか?というより早く起きろ。俺はお前の母か?目覚まし代行か?」
学校に近い貸家を借りて2人して住んでるのだが、俺が神楽の面倒を見る羽目になっている。
『神倶夜、神楽の面倒しっかりと見てちょうだいね。神倶夜の方がお兄ちゃんなんだから』
年下の面倒は年上が見るものだという責任の名の鎖に俺は繋がれているようなものだ。
「まあ、それが俺の出来る範囲で対処出来るから良いけど」
実際、そこまで苦でもない。逆に神楽に助けられてる面も多々あるので五分五分だと思う。
「入るぞ」
─ガチャ。
「くたばれ変態ィイ!!」
部屋に入るなり、そう叫びながらコイツは狸寝入りをしてるのではないかと思う力で俺に枕を投げて来た。
「…変態呼ばわりするぐらいなら自分で起きろ」
枕を軽々とかわして神楽を見下ろした。しかし、彼女は本当に寝ているらしく声を掛けても反応しなかった。
「寒っ!やだやだ怖いっ!変態が変態に連れていかれるっ!!マジやべぇ!!男は狼なのよ!気をつけなさい~!」
「ピンクレディか。いつの生まれだ」
彼氏が出来ないから危険な妄想が悪夢となって襲われているのだと思う。だから彼氏を作─。
「お前らなんか望んでなんかないわァ!神倶夜ァアア!!助けてぇ!!何かアレだよアレ!秘密道具的な何かで抹殺を」
「俺は何処の猫型ロボットか。人殺しを人に頼むな」
どうやら夢の相手はお気に召さなかったらしい。俺に助けを求めるのは間違いだ。
「流石は神倶夜ぁ!」
何をしたんだろう俺。とてもじゃないが神楽に倒せない奴を倒せるとは思えないんだが。帰宅部だし。
「ありがとぉおおお!!も~マジで愛してるぜ☆神倶夜お兄さまァアア!!」
にやけながらコイツ今、何て言った?
お に い さ ま?
この神楽が?
…どうやら神楽はとんでもない悪夢を見ているようだ…起こさなければ。
フライパンを神楽の頭部に被せ、お玉を垂直に大きく振りかぶる。あとは一声掛けながら振り下ろすだけだ。
「くぉらぁああああ!!いい加減、目を覚ませぇええっ!」
─ガァンガァンガァン!
「どぉわわぁああああ!?除夜の鐘!?除夜の鐘が頭のなかで乱舞ってる!!」
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